概要
このワークショップは単発でも参加できる連続ワークショップです。
2016年初演の米国サンフランシスコのインプロ劇団「BATS Improv」のリサ・ローランド氏らが考案したインプロ上演形式「The Bechdel Test」を通して、インプロ(即興演劇)とジェンダーを深めていきます。今までジェンダーについて触れたことがなかった方ももちろん、ご参加頂けます。
この形式は3人(もしくは2人)の女性が主人公です。主人公それぞれの人生を描いていきます。起承転結のあるストーリーを創っていくのではなく、ショートシーン(人生のスナップショット)を重ねていくことで、主人公の多面性を引き出すことを目指します。
こんな方におすすめのWSです
・自分の演劇観・インプロ観を広げたい、視野を広げたい
・新しいインプロ、インプロショー形式を体験したい
・ジェンダーと表現の探究に興味がある
・ジェンダーは正直よく分かってない(知識がない)けど興味がある、ピンと来た
・ジェンダーやインプロを明るい・柔らかい雰囲気の中で深めていきたい
・自分のジェンダーバイアスやインプロをじっくり見つめていきたい、気づいていきたい
「ベクデルテスト」とは?
アメリカの漫画家アリソン・ベクデルにちなんで命名された、ジェンダーバイアス測定のために用いられるテストです。
フィクションの作品に、
①最低でも2人の女性が登場すること
②女性同士の会話があること
③女性同士の会話に、男性に関する話題以外のものがあること
※登場する女性には名前がないといけないという条件が追加されることもあります。
映画・小説・ドラマなど、フィクション作品がいずれかのジェンダーに偏っていないかどうかの基準として活用されています。
インプロ上演形式の『The Bechdel Test』の名前の由来はこのテストです。
インプロ上演形式『The Bechdel Test』の魅力
講師である私・一永紗良は直井玲子さんと園部友里恵さんが主催の、文部科学省・科学研究費の助成を受けたアクションリサーチの場でもある「インプロとジェンダー探究プロジェクト」に約3年間参加し、このフォーマットを探究し、このフォーマットが大好きになりました。
”人間の多面性を描く”というところが興味深い
起承転結のあるストーリーを創っていくのではなく、ショートシーン(人生のスナップショット)を重ねていくことで、主人公の多面性を引き出すことを目指すフォーマット。
主人公の喜怒哀楽、色んな感情を引き出したり、お葬式・友達とのカラオケなどフォーマルな場所/カジュアルな場所に居るところを描いたり、主人公が人に対して優しかったり活躍するところもあれば、人に対して冷たい態度をとるシーンなど、主人公の多面性を描くために周りのキャストたちは即興で関わっていきます。
この”多面性”は誰もが日常使い分けているものですが、起承転結のあるストーリーを創っていく際にはどうしても物語上でこぼれ落ちてしまいがちな要素でもあります。
The Bechdel TestではWhat comes next?(次どうなるの?)でストーリー展開を描いていくのではなく、What else?(他には?)の問いかけで、こぼれ落ちてしまっていた物語を描いていきます。
プレイヤー・お客さんともに、ジェンダーについて立ち止まって話し合える時間がある
上演が終わったあと、今日なされたシーンや登場したキャラクターについてちょっと立ち止まって考えてみる15分ほどのシンプルな「ディスカッション」の時間がこのフォーマットにはあります。
キャラクターにお客さんご自身を重ねて観ていただいたことでこんなことを思い出した、こんなジェンダーバイアスをキャラクターは持っているように自分は感じた、などお客さんとプレイヤーがフラットにお話出来る時間です。それにより、ジェンダーへの気づきが一層深まっていきます。
エンターテイメントと社会的意義の両立
ジェンダーと真摯に向き合っていく上演形式。堅いイメージがあるかもしれませんが、とてもポエティックで興味深いでもあります。
主人公たちのモノローグ(独白)から始まり、ショートシーンを重ねていき、最後も主人公たちのモノローグ(独白)で終わります。
インプロならではの今この瞬間をお客さんとも共有出来るので笑いも自然と起きます。
楽しくジェンダーに触れられる時間を創り出せる、まさにエンターテイメントと社会的意義が両立している、とても上演する甲斐のあるフォーマットだと思います。
誰もが参加出来るフォーマット
ジェンダーとは…生物学的な性とは違い、社会的・文化的につくられている性のことです。例えば、「料理は女がするもの」や、「仕事は男がするもの」といった、「女らしさ」「男らしさ」という文化的につくられた意識を指します。
フェミニズムとは…現在は男女問わずすべての人が性差別的な搾取や抑圧を受けずに済む社会の実現を目的とする運動のことを言います。
『The Bechdel Test』は「3人の主人公が女性」ということは決まっていますが、もちろん男性もご参加いただけます。
先日の稽古会では女性2名、男性5名の参加で、男性の方が多かったです。
ワークショップの大きな特徴
・4月6日に一度、試演会をします。(集客は皆さんの呼びたいお知り合いを呼んで頂く程度の小さなものです。見学料無料。)みなさんとご相談の上で他の日にも、もう一度試演会をしてみる可能性はあります。
・ジェンダーバイアスとも向き合う時間になるので、自分の言葉で語る時間を大切にします。なので、このWS自体にも色んな表情を感じると思います。()内は、あくまでおおよそのイメージで、勿論その時の状況によって感じることは様々かとは思いますが、イメージしやすいと思うので書いておきます。
■ジェンダーに関する、安全にじっくりお話出来る哲学対話の時間(静・じっくり・深める)
■フォーマットを実際にやってみる時間(活発・チャレンジング・テンポが速め)
■インプロワーク(フォーマットをやってみてその時必要なものをやります。”静”のときもあれば”活発”な感じのときも。楽しさも大事にします。)
の3種のことが混在するWSです。
講師より
私自身が文部科学省・科学研究費の助成を受けたアクションリサーチの場でもある「インプロとジェンダー探究プロジェクト」に約3年間参加し、この『The Bechdel Test』上演形式と出会ったことで、インプロの視野も人生の視野もグッと広がり、より自由に、豊かになりました。
「ジェンダー」というと堅いイメージがある方もいらっしゃると思うのですが(私自身もプロジェクトに関わる前はそうでした)、そんなことはありませんでした。
プロジェクトではベースとして、とても牧歌的で平和な雰囲気で、ひとりひとりが安心して意見を述べられて、やってみよう、試してみようのインプロマインドが活かされていて、自由参加の読書会が定期的に行われていました(毎回違う著者の方の本がチョイスされてました)。
そんな場所だったからこそ、「ジェンダーを学ぶことはこんなにも興味深くて楽しいことで、世界が広がってより自由になれることなんだ」と知りました。
だからこそ、自分自身で企画するWSも、この空気感で今後もやっていきたいなと思ったのです。ワークショップを開催する背中を押して下さったのも、
プロジェクトの主催のおひとり、直井玲子さんで、玲子さんに今後もWSを開催してほしい、とリクエストしたら、「さらちゃんは自分でぜひ開催してください」と勇気づけて下さったのです。
ベクデルテストはストーリー展開を考える必要がありません。誰もが参加しやすい上演形式だと思いますので、インプロを始めたばかりの方も安心してご参加頂けます。
一方、エンターテイメントとして興味深く演じるにはとてもチャレンジングしがいがあるものなので、インプロ経験者の方はインプロの視野も広がり、技術も発揮しどころが沢山あるので、”もっと色んなこと、新しいチャレンジしたい!”と思う経験者の方、大歓迎です。私のようにハマってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
「だれもがより自由に、自分らしく生きやすい平和な社会を創造する」という願いを込めて、このWSを開催します。
この上演形式に沢山の方が出会って頂きたい、という意図を持って、このWSは普通の演劇WSよりお手頃な参加費設定にしています。
皆様とお会い出来ることを楽しみにしております。